伝説の一局「▲5二銀」

トレード雑記第184弾、

 

伝説の一局「▲5二銀」

前回につづき将棋ネタ。

 

「▲5二銀」ですぐに理解できる人は、わたしと同じ将棋ファンです。

 

正確には伝説の「一手」なんだけど、

この一局自体が伝説となっているので、そのあたりをご紹介。

 

映像も残っていますので、後ほどリンクを貼りますが、

「今の」主流の将棋とは異なる力強い「所作」にも注目です。

 

伝説となった理由

この「▲5二銀」は第38回(1988年度)NHK杯トーナメント4回戦、

加藤一二三九段と羽生善治五段(当時)との一局において、

先手・羽生五段の指した勝負を決定づける一手です。

 

ちなみに「▲」は先手を、「5」は横の、「二」は縦のマスを意味します。

(この場合、後手は「▽」と表現されます)

 

画像(NHKで放送された当時の大盤解説の画像)だとこんな感じです。

 

持ち駒の銀を、5二に打ったところで、

後手としては、6一の金でも、8二の飛車でも取れる、タダ捨ての銀打ちなんだけど・・・。

 

 

この一局が伝説となった理由はたくさんありますが、

対局者、対局内容、解説・聞き手、のすべてが超一流で、

この一局をつくりあげたと表現してもいいくらいのすばらしい対局。

 

対局者

加藤一二三九段:元名人、前年度準優勝(これまで優勝6回)の将棋界第一人者

羽生善治五段:史上3人目の中学生棋士(史上初が加藤九段)、新進気鋭の18歳

 

加藤一二三九段は、

最近では藤井聡太五冠のデビュー戦の相手としても有名で、

引退後にはテレビ出演なども盛んな「元気なおじいちゃん」。

 

当時48歳、全盛期をやや過ぎたとはいえ、

50代で棋戦優勝をしていますし、まだまだ第一線で活躍する猛者。

 

一方の羽生善治五段は、

3回戦で大山康晴十五世名人(故人)を破っての登場、

4回戦で加藤九段と対決、その後は準決勝で谷川浩司王位(現・十七世名人)、

決勝で中原誠名人(現・十六世名人)と名人経験者を立て続けに倒しての最年少優勝を飾ることに。

 

そして翌年、初タイトル「竜王」を獲得することから、

羽生伝説の幕開けとなった一年であり、それを象徴するのがこの一局といえるわけです。

 

対局内容

対局内容は、将棋ファンにとって知らない人はいない(知らないとモグリ)レベルの、

「棒銀」戦法の使い手である加藤九段に対して、なんと羽生五段が棒銀を採用したバチバチの序盤戦。

 

中盤の捻じり合いからの、華麗な「▲5二銀」が超一流の流れとなっています。

 

また、映像をみるとわかりますが、

現在の静かな(≒おとなしい)所作が主流の将棋とは異なり、

駒音高く、チョンチョンも多いし、互いに感情むき出しの激しくもあり、

懐かしくもあり、といった将棋スタイルです。

 

解説・聞き手

解説は、米長邦雄永世棋聖(故人)で、もともと解説には定評がありましたが、

この一局は米長永世棋聖の解説があってこそ、その価値を高めたとも言われています。

 

聞き手は、近代将棋社社長の永井英明さん(アマ八段、故人)。

解説を立てつつ、視聴者目線で的確な質問をする永井さんの聞き手は絶品でした。

(永井さんが辞めてから、聞き手は女流棋士の仕事として現在では定着しています)

 

なお、棋譜読み上げと記録係は、

女流棋士の一期生である蛸島女流五段(当時)と山下女流五段(同左)です。

 

それでは、フルの映像(対局+感想戦で約80分)もYouTubeありますが、

ここで紹介するには長すぎるので、ブログではダイジェスト版をどうぞ。

 

ちなみにアイキャッチ画像は、感想戦(フルの映像)の模様です。

(左から、羽生、永井、蛸島、山下、米長、加藤。敬称略)

 

 

最近のABEMAでの将棋放送しか知らないという人にとっては、

激しい気合いのぶつかり合いは新鮮に映ったのではないでしょうか。

 

もしかすると、今の時代にやると、

マナー違反だとかやいのやいの言われるのかもしれませんが、

この時代の感情むき出しの将棋も見ていて楽しいものがあります。

 

といったところで、本日のブログは手仕舞い。

 


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