W杯小話③.「森保マジック」が解けた瞬間
トレード雑記第202弾、
W杯小話③.森保マジックが解けた瞬間
ワールドカップ2022カタール大会、台風の目となっていました日本代表は、
前回準優勝の強豪クロアチア戦で1-1同点のままPK戦で無念の敗退となりました。
日本史上最高成績タイ「ベスト16」での終戦。
森保一監督以下コーチ陣、
代表選手たち、スタッフ、関係者の皆さま、
本当にお疲れ様でした。
大きなケガやトラブルもなく、
「日本代表の強さ」をいかんなく発揮してくれたように思います。
優勝チーム以外は敗北を持ってワールドカップを去るわけですから、
堂々と胸を張って日本に帰国してください。
同時に、今回の大会での結果が、
2026年ワールドカップに繋がっていくことを期待しています。
さて、敗戦後のふり返りはとても悔しいですが、
もろもろの思いを込めて、ひとりのサッカーファンの感想と課題を書き連ねます。
1.「森保マジック」が解けた瞬間
森保マジックが解けた瞬間について、
わたしのなかでははっきりしていて、
それは、後半が開始された瞬間です。
前回のブログで、森保監督の采配について考察しましたが、
わたしの解釈では、今回のワールドカップでの日本代表は、
前半と後半を別々の試合と仮定するぐらいのメンバー交代、
システム変更を果敢に実施していました。
結果的に、そのことがサッカーの常識である90分の戦い方に、
驚きと称賛、畏怖の念を持って迎え入れられた、という感覚。
ところが・・・、
今回のクロアチア戦においては、
前後半のメンバーチェンジが一切なし。
森保マジックが解けた瞬間です。
正確には、森保監督が自ら魔法を解いたともいえます。
そして試合展開は、
後半10分に失点(1-1の同点)、
後半17分にクロアチアがメンバー交代、
それを受けて、
後半19分に日本がメンバー交代(長友・前田out、三笘・浅野in)。
それ以降は、両チームともチャンスがありましたし、
交代枠もそれぞれ活用されていましたが、
試合は1-1の同点で90分では決着がつかず、延長戦へ。
延長戦でも決着はつかず、PK戦で雌雄を決することになりました。
森保監督が自ら魔法を解いた理由はいくつか考えられますが、
前半勝ち越したので「後半もそのままメンバー固定で様子見」、
「得点が動いてから対応する」という・・・、
あまりにも常識的な戦い方を採用してしまったようです。
これだと前回ブログで紹介した闘莉王さんが指摘した、
「リアクションサッカー」そのものですね。
わたし個人としては、
後半開始からメンバー交代、システム変更をしてほしかったのですが・・・。
もちろん結果は、もっと悲惨なものになったかもしれませんが、
信念とも思える戦い方を変更して負けちゃうと、悔やんでも悔やみきれない感じ。
2.なぜ、森保監督は自ら魔法を解いたのか!?
結論を書くと、いくつかの出来事が折り重なっての必然だったと思います。
①累積警告やケガの影響で出場できない選手の存在
スペイン戦で活躍した板倉 滉(いたくらこう)、久保 建英(くぼたけふさ)など、
クロアチア戦では出場機会がありませんでした(ベンチ入りもせず)。
変わって入った選手も活躍しましたが、
前半の戦い方に影響があったことは間違いありません。
(ということは後半の戦い方にも影響があるわけです)
②前半から積極的に左右で仕掛ける戦略の功罪
あえて功罪と書きましたが、クロアチア戦では日本代表もボール回しができるなど、
ドイツ戦やスペイン戦のような一方的な防戦の展開にはなりませんでした。
特に、右の伊東 純也、左の長友 佑都が積極的にオーバーラップする展開となって、
たくさんのチャンスを生み出すことに成功して、先制点に繋がりました。
この戦略がズバリ的中した瞬間でしたが、
一方で、左の長友のオーバーラップを多用したことで、
後半出場予定の三笘の輝きを抑えることになりました。
もし、左サイドは守備に専念し、右サイドからの仕掛けを中心に組み立てていたら、
後半の三笘のドリブル突破が「より活きる」展開になったかもしれません。
つまり、長友が「影」の役割を徹底することで、
三笘が「光り輝く」というグループリーグの展開から一転、
長友も三笘も、いずれもなんとなく輝くもののコントラストとして「ぼやけた」感じ。
③有利な状況でのシステム変更への躊躇
森保監督のみぞ知る、というところですが、
1点先制して「リードしたまま前半を終えた初めての試合」となったことで、
奇策であるマジック・魔法ではなくて王道・常識的な戦い方にシフトしたのかもしれません。
こればっかりは、わかりません。
④決勝トーナメントへの対応不足
日本代表の過去の、そして今回もだけれど、
ワールドカップの最高成績はベスト16≒グループリーグ突破。
つまり決勝トーナメントは一度も勝ったことがない。
これまでのリーグ戦とは異なり、同点なら延長戦、PK戦があるわけで、
そういった状況をも想定したときのシステム変更をいつ実施するのか、
もしかすると、監督、選手ともに限界を超えていたのかもしれない。
いずれにしても、結果的に、
グループリーグでみられた「前半と後半での劇的なシステム変更」は影を潜め、
常識的な選手交代と、システムの微調整程度の攻撃と守備の確認となりました。
3.これからの日本代表の課題
ケガ人も多く、決して選手層が厚いとは言えない日本代表のなかで、
丁寧なやりくりから生まれた「魔法」だったのかもしれないのですが、
最終的には森保監督自らの手でその魔法を解くことでワールドカップを終えました。
これからの課題としては、
システム・戦略面では、
①森保マジックの伝承
②森保監督の成長
③決勝トーナメントの戦い方
だと思う。
①は、あえてマジックという表現を使ってはいるけれど、
前半後半を別々の2試合と換算してシステムやメンバーを調整する考え方は、
新興~中堅レベルの代表チームにおいて、かなり有効な戦略だと思う。
次回出場国が激増(32→48)するワールドカップにおいて、
注目を集める戦い方のひとつとして確立されていてもおかしくないと思うけど、
なんとなく森保監督の発信力などが心配で、その意図が伝承できるのか大いに不安。
それは②とも関連するんだけれど、
残念ながら森保監督の人気・知名度がめちゃくちゃ低い・・・。
辛辣に書けば、華がない。
日本代表監督としては、優秀過ぎるくらい優秀なんだけれど、
あまりにも軽く見られてしまう。
これだけ結果(ワールドカップ16強)を出しても、
4年間の過程が良くないから監督を変えろとか、
戦略や戦術がない(≒理解不能)から森保には限界だとか、
見ている側が理解できていないだけだろ、みたいな声も小さくない。
この自分(元代表などOBやメディア、ファンを含む)が疑問に思う、
理解ができないから、〇〇はダメだの論法がいつもよくわからない。
サッカーに限らないけれど。
とはいえ、森保監督には、
(日本代表監督の続投はなんとなくなさそうな雰囲気なので)
たとえば海外の中堅~強豪クラブや代表チームでの監督をして結果を残してほしい。
残念な言い方だけど、そうしないと森保監督の凄さが伝わらないんだと思う。
典型的な海外で箔をつけての逆輸入というやつですが、
ワールドカップ終了後、それなりのチームからオファーがくると思うので、
現在54歳、たとえば8年後のワールドカップで新・森保監督の日本代表を見てみたい。
選手の多くが海外でプレーしているように、
監督やコーチも海外で研鑽することも視野に入れてほしいし、
そういった監督やコーチのもとで代表選手を集結させてこそ、
中堅レベルから強豪レベルの仲間入りできるのかもしれない。
そして③。
日本代表の最高成績は、
今大会と同じ「グループリーグ突破」=「ベスト16」。
決勝トーナメントで勝利した経験は一度もない。
一部の人からは、延長戦やPK戦の戦い方に批判が集中しているようだけれど、
日本代表にとっては「未知との戦い」なので、そのあたりを理解したうえで発言したらいいのに、
と感じることもしばしば・・・。
史上最高タイの記録を出した、
それでもまだ頂上に届かない。
という状況なんだけどね。
セル爺(セルジオ越後さん)の批判は伝統芸の域だけど、
城彰二さんとか闘莉王さんとかの批判って、ちょっと度が過ぎていないか!??
森保監督は、選手として日本代表で、監督としてもJリーグ・サンフレッチェ広島を優勝3回、
日本代表では監督、コーチとしての実績を積み重ねて、そしてワールドカップでの結果だよ。
森保監督が単純に嫌いなんじゃないかっていうくらい、発言にリスペクトがない。
わたしのようなサッカーの素人ではなくて、元代表選手なんだから、
結果も過程も、願望も嫉妬も、いろいろな思いがあるんだろうけれど、
自分が理解できないからといって「結果を出し続けている」業界の先輩への発言とは思えないくらい酷い。
森保監督の戦略・戦術、選手起用などが理解できないから「イコール戦略などがない」とはならないし、
むしろ森保監督の隠された意図を理解できない人にかみ砕いて伝えるのがプロの役割だと思うけど。
もしくは「自分にはわからない」→「理解できないくらい凄いことをやっている」って評価すればいいのに。
(何度も繰り返すけど、現時点で最高の結果を出している人が相手だから)
自分が理解できない戦い方で「勝ったのは運、負けたのは采配」って・・・、
本人が言うからかっこいいわけで、他人が言ったら完全なイチャモンだよね。
とはいえ、
そろそろ「決勝トーナメント」の戦い方をしっかり準備する段階にきているし、
それができるレベルに日本代表はあると思う。
文字どおり「今後の課題」ですね。
また、より直接的な課題としては、
①有利な状況になったときの戦略
②攻撃面での中心選手(司令塔や点取り屋)の育成
が必要だと思う。
①は、クロアチア戦で先制した後がまさにそうだし、
グループリーグでもドイツ(第1戦)に勝利した後のコスタリカ(第2戦)もそう。
有利な状況にあるはずなのに、それが活かせない・・・。
②は常に言われ続けることではあるけれど、
そしてシステムの深化と真逆の発想でもあるけれど、
やっぱりスーパースターと呼べるような選手が誕生してほしい。
長々と書いたけれど、だいたいこんな感じ。
今回のワールドカップで最も株を上げたのは、
三笘 薫や堂安 律(どうあんりつ)も捨てがたいけれど、
なんだかんだ言って、やっぱり森保一監督。
日本代表監督を続投するのか、退任するのかわからないけれど、
これからもクラブチームや代表で監督をしている姿が見たいです。
といったところで、本日のブログは手仕舞い。
Thank you for your Magic!