かっこいい所作の変遷
トレード雑記第185弾、
かっこいい所作の変遷
前回のブログで、加藤一二三九段と羽生善治五段(当時)の映像を紹介しましたが、
加藤九段と羽生五段のやりとりは、熱の入った「かっこいい対局」だと感じました。
同時に、今だとマナー違反と非難されるのかなぁとも思ったので、今回のテーマ。
ちなみにタイトルを「かっこいい」にするか、「美しい」にするか、迷ったけれど、
共通点として、基本的に主観であり時代によって流行り廃りがあるということ。
たとえば、女性の「美白」も「ガングロ」も可愛いを追求したメイクでしたし、
男性の「短髪・黒髪」も「長髪・茶髪」も、かっこいいを追求した髪型でした。
それと似たような感覚で、必ずしも正解はないのだけれど、
流行り廃りのなかで求められる「かっこいい所作とは?」というお話です。
将棋の主流は「静かな差し回し」
駒音高く「バチーン!」と指すことは、最近の将棋ではほとんど見られなくなりました。
以前の将棋だと、勝負所で指す際に(特に持ち駒を打つ際に)、
「バン、バン」と「カラ打ち」(盤上に駒を打ちつける仕草)を2回ほどかましてから、
「バチーン!」と指す(あるいは打つ)と、迫力があってかっこいいとの評価もありました。
現代では、どちらかというと、静かにそっと指す感じが主流だと思いますし、
カラ打ちはほぼ間違いなくマナー違反、駒音高く打つ所作も敬遠される可能性があります。
この「静かに指す所作」の流れに、
最も貢献(?)したと思われるのが、丸山忠久九段。
丸山九段は羽生九段とは同い年の52歳。
(1970年生まれで、誕生日も丸山九段が9月5日、羽生九段が9月27日)
名人のタイトルを獲得したトップ棋士のひとりです(現在タイトル獲得3期)。
とはいえ羽生九段の初タイトルが1989年(竜王)なのに対し、
丸山九段の初タイトルが11年後の2000年(名人)となるので、
ファンにとっては同じ世代で活躍したという感覚は薄いかもしれません。
(羽生九段の全盛期より一世代後に登場した棋士というイメージ)
丸山九段が将棋を指すときは、
駒音が出ないくらいにそっと静かに指すスタイルでした。
丸山九段がタイトルを取って活躍していた時期(2000年代初頭)と、
テレビ(インターネットテレビを含む)での放送対局が増えてきたり、
派手な所作で人気を博したようなベテラン棋士が続々と引退したり、など、
いろいろなタイミングが重なって、現在の「静かな差し回し」が主流になったように思います。
以前は迫力のある(≒威圧する)差し回しも多かったけど
ちなみに、前回の映像の対局者である羽生九段の将棋は、
今から見ると意外なほど「迫力のある差し回し」をする棋士でした(当時の印象)。
終盤に勝ちを意識したときに出ると言われる「羽生睨み」(相手の表情をのぞき込む仕草)や、
「手が震える」所作(マス目に指せなかったり、駒を落としたことも)も、
いまでは「羽生善治伝説」となって昇華されています。
おそらく、現在の若手棋士が同じことをやるとマナー違反と言われそうです・・・。
また、一方の加藤九段も、
というか、加藤九段こそ「迫力ある差し回し」の第一人者でした。
その所作が原因のひとつとなって反則負けをしたこともあります。
(トップ棋士が「待った」(≒指し手の取り消し、2度指し)の反則は珍しい負け方)
以前の、チャンスやピンチでの迫力ある一手を指す所作も、
現在の、どのようなチャンスやピンチでも一喜一憂しない、
静かな差し回しも「プロのかっこいい所作」と考えられます。
どちらが正しいか、ではなくて、
その時代をけん引するトッププロの所作が流行ったり、
テレビなどの放送対局や視聴者の声からの要請だったり、
「かっこいい所作」は時代によって変わっていくのかもしれません。
ちなみにアイキャッチ画像は「いらすとや」より、
“ティッシュを使って鼻クソをほじるマナーの良い男性のイラストです。”とのこと。
これは・・・、マナーが良いのか、そうではないのか、
時代というか、TPOによって大きく変わりそうですねw
おまけ-株式投資・トレードの主流は
株式投資・トレードでも、現在の主流としては、
一喜一憂するスタイルよりも冷静沈着なスタイルが「かっこいい所作」だと思います。
ただし、一喜一憂するスタイル(現在はある意味でネタ枠?)において、
爆益報告が相次ぐことで「株式投資・トレードは気合いだ!」みたいになる可能性も、
ゼロとは言えないので、そういう未来も見てみたい気がするのが、面白いところです。
おまけ2-そういえば麻雀でも
「かっこいい所作」に魅了されることは、
ある意味で「プロの所作へのあこがれ」でもあるので、
ブログ本編で紹介した将棋に限った話ではありません。
麻雀でも将棋と似たような議論があって、
「バチコーン!」と捨て牌を捨てるいわゆる「強打」などは、
以前は「かっこいい所作」と言われたこともありましたし、
その後にその人がアガリを決めると「気合いで牌を呼び寄せた!」とか、
感動の演出として表現されることもあったわけですが・・・。
最近ではマナー違反と言われることが、ほとんどだと思います。
先日の対局における瀬戸熊直樹プロの「誤ツモ」疑惑でも、
牌山から牌をこぼしたり、牌を手元で落としたり、いろいろな要素が絡み合っていそうです。
瀬戸熊プロが所属する日本プロ麻雀連盟では、
今回の「誤ツモ」疑惑を受けて、新ルールが制定される流れになっているようです。
将棋などの競技、あるいはスポーツのテレビ観戦と比較すると、
「競技麻雀の放送対局」は、本当に産声を上げたばかりという印象です。
旧来からのコアなファン層、新しく放送対局(特にMリーグ)からファンになった層、
さらには現時点でファンでもなく興味もない一般の人をも含めて、様々な声を聞きながら、
競技者や製作者など関係者で議論して、放送対局、競技麻雀が発展していけばいいなと思う次第です。
といったところで、本日のブログは手仕舞い。
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